この方は、私も過去にお仕事をいただいた方で、
現場の実行コストにとても詳しい経営者なのですが、
要するに、「設計監理を委託して建築を造るほうが合理的なのに、
そのことを建築家や設計事務所はきちんと説明していない!」という指摘でした。
確かに、私たちの仕事は、
守秘義務がありすべてを開示できる訳ではありませんし、
建売り住宅は別にして、
建築は通常完成品を売る訳ではなく、
クライアントの要望に対して
一品生産としてゼロから生み出される建築は、
商品化から最も遠いところにあり、コストを明示するのが難しい領野なのだと思います。
800万戸の空き家の問題もあり、
新たに作ることの意味も問われる世の中で、
ハウスメーカー(以下HM)で作る人が圧倒的に多く、
また地方では技術のある工務店さんが、
宣伝力のある大手HMにシェアを奪われているというお話も見聞きしているので、
ハウスメーカーの平均的な住宅と比較し、何が違い、
どのようなことができるのかを検討しておくことは、
意味があると思いましたので、少し調べてみました。
元大手住宅メーカーに勤めていた複数の友人に聞くと、
ハウスメーカーが建築にかけられる実行コストは
支払総額の約5〜6割程度なのだそうです・・・!
2012年度の大手ハウスメーカーの平均坪単価は77.45万円、
平均坪数39.5坪なので、
77x40=3080万円がおおよその平均支払額となります。
実際の工事費は、
3080x0.5〜0.6=1540〜1848万円で造られ、
坪単価の実効値では、
77万×0.5〜0.6=坪38.5〜46.2万円で造られた家ということになり、
その差額約1500〜1200万円は、
モデルルームや広告費、営業経費、HMの作業料や利益などになるのだろう・・・
と思います。
一方、コスト監理も含め、
建築家や設計事務所に設計監理を委託し、
技術のある工務店さんに適正な価格で施工をお願いした場合は、
仮に坪70万円位で40坪の家を造ると、
70x40=2800万円の工事費、設計監理料を仮に10%280万円とすると、
合計額は同額の3080万円となります。
設計監理料はかかりますが、
クライアントのご要望に合わせた建築を設計し
クライアントの側にたって、見積りのチェック、コスト調整、現場監理を行うため、
工事費含めてその支払い金額のほとんどすべては無駄なく
クライアントのための家を生み出す作業に使われ、
実効値でも工務店さんの経費や利益を仮に15%とすると、
坪60.9万(=70/1.15)で造られた家ということになります。
同じ支払額でも
設計監理を委託したほうが、
実際の家にかけられる坪単価は、14.7〜22.1万も多く、
建物全体(40坪)では約588〜884万も多くなります。
この数字は、
HMとスペックと規模が同じ場合は価格を下げていけることを意味し、
HMとスペックが同じなら家をより広くでき、
同じ広さならよりスペックを上げていけることを意味します・・・!
そう考えると、
コストパフォーマンスの高い家を生み出すためにできることは
まだまだたくさんあるように思います!